日々...

ある秋の穏やかな晴れの日に
ひとりの年老いた男性が
布袋様の前に歩み寄る姿が目に入った。

男性はゆっくり布袋様を見て
静かに帽子を脱ぎ
手を合わせた。

その姿をわたしは見守っていた。

あんな風に私は布袋様の前で
手を合わせたことがあるだろうか。
あんな眼差しで見たことがあるだろうか。

名前もわからない誰かの
心の声を掬いとっている。

真理とはなんですかとある時
わたしは父に尋ねた。

とても難しいと父は最初に言い、
そして
「人の心の在り方」

と言った。

自らの内側に潜れば潜る程
わからなくなっていた。

でも
わからないを
肯定していいような気がし始めた。

わからないから
一生懸命考える。

感じて
考えて
何度も何度も反省しながら
今を一生懸命生きようとする。

男性は最後に振り返り
お寺を眺めていた。

いつの時代も
フェアに言葉なく
お互いを尊重し合ってきた場所なんだろう。


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